この症状、温めた方がいいの?冷やした方がいいの?
普段感じている痛みに対して、温めた方がいいの?冷やした方がいいの?と1度は疑問に感じたことはありませんか?そこで、今回は症状に適した対応を行えるよう、基礎知識と使い分けを紹介していこうと思います。
《温熱》
- 温熱の効果・目的
・軟部組織の柔軟性向上
➡軟部組織(筋や皮膚)を柔らかくする効果があり、ストレッチ前後に行うと効果的です。
柔軟性を改善したいという方におすすめです。
・血管拡張作用
➡血管拡張により循環の改善が起こり、血管内に滞っている老廃物や痛みの物質を流してくれる事で痛みを緩和させる効果が期待できます。(図1)
・筋緊張の緩和
➡神経-筋に作用して筋肉の緊張を緩和させる効果があります。また、2次的に血管の圧迫が改善され、循環が良くなることで痛みを緩和させる効果が期待できます。(図1)
図1)筋肉の循環改善による痛みの軽減
- 温熱の注意事項
・急性炎症や損傷
➡炎症がある時や受傷直後に行うと出血や腫れが酷くなる危険性があります。
基本的には受傷後2~3日や、腫れている、患部が赤くなっている、触ったら熱いといった症状がある時は控えましょう。
・出血した後、出血する可能性がある部位
➡血管拡張作用により、傷口や損傷部位に行うと再出血する可能性があります。
《寒冷》
- 寒冷の効果・目的
・炎症のコントロール
➡怪我などにより組織の損傷が起こると、内出血が起こりその周辺の毛細血管にも影響が及び、循環障害が生じます。毛細血管は酸素や栄養を細胞に運んでいるため循環障害によって周辺の正常な細胞にも死滅の危機が及びます。冷やす事でこの、2次的な障害を食い止めるのに効果があります。(図2)
図2はアイシングをした場合としなかった場合の違いです。1次的な損傷は大きな差がありませんが、損傷後ほったらかしにする事で障害が大きくなり、結果的に治癒に余計な時間がかかってしまいます。
図2)アイシングなし、ありの違い
- 寒冷の注意事項
・乳幼児や超高齢者への使用
➡時に、温度調節機能が損なわれている場合があるため注意が必要です。
・高血圧の既往がある人
➡1次的に血圧を高めてしまうので注意が必要です。
・循環障害などがある場合
➡循環障害によって腫れているようになっている場合は、状態を悪化させる可能性があります。そのため、炎症によって腫れているのか判断が必要です。
※冷やす事により異変や不調が生じる場合は控えましょう。
- これらを踏まえて、どちらを行えばいいのか?
~温熱~
温めは筋肉が緊張している人や、硬くなっている事で筋肉内の循環が悪くなり痛みが出ている人に有効的です。そのため、じっとしている時や冷えると症状が強くなる人、運動後や入浴後は痛みが軽いといった人におすすめです。
温める方法は様々ありますが、自宅ではお風呂、蒸しタオル、市販のホットパックなどで温めるといいでしょう。
~寒冷~
冷やすのは、基本的に炎症症状(患部が熱を持っている、赤くなっている、反対と比べて腫れている気がする)がある場合は、ビニール袋や氷嚢に氷を入れてアイシングを行いましょう。
冷やすのって湿布でもいいの・・・?
湿布には痛みや炎症を和らげる成分が含まれているため、貼ると冷やしている感覚と痛みが和らいだ感覚になるかもしれません。しかし、市販の湿布の多くには血行を促進する作用があるものもあります。そのため、寒冷の効果が期待できない可能性があります。受傷直後はアイシングを行い、炎症が落ち着いてきた時やアイシングが行いにくい夜間時に使用するといいでしょう。
図3)自宅でのアイシングの様子
- 終わりに
今回紹介した内容は、一部です。症状に適した対応を行うためには自己判断だけでなく専門医のアドバイスも必要です。また、これらは対症療法で症状が治るとは限りません。「なぜその症状が出ているのか」お近くの専門機関に受診する事をお勧めします。
- 参考文献
図1、図3)山本利春 吉永孝徳:スポーツアイシング
図2)林典雄 肩関節拘縮の評価と運動療法
Michelle H. Cameron EBM物理療法