育成年代のサッカー選手に多い障害(13):脳しんとう
今回は、主にサッカー中の接触プレーで発生する「脳しんとう」を紹介します。
受傷例はGKではセービング時の接触プレイ・ゴールポストに追突する、FPでは競り合いの時に相手とぶつかる、強いボールをヘディングするなどで受傷します。
脳しんとうの重要な症状は意識障害です。意識障害には、少しボーっとする状態から、意識を失う失神までさまざまな程度があります。また受傷の際に起こる記憶障害も重大な症状で、これには2つのタイプがあります。脳しんとうを起こす前の記憶がしばらくの間失われるタイプ、脳しんとう後の記憶が定着せずに記憶されないタイプです。
その他、脳しんとう後には、頭痛、吐き気、耳鳴り、抑うつなど、さまざまな症状が生じることがあります。
脳しんとうを確定診断するための方法は、現在のところありません。したがって、①頭に衝撃が加わったということ、②ある程度の意識障害や、脳しんとう後遺症があること、③脳しんとうよりも大きな怪我がないこと、という条件がそろった場合に、脳しんとうと診断します。
現場では、まず意識障害の確認を行い、その後の変化を観察します。頭痛、意識障害、吐き気などが悪化していくような場合には、医療機関(脳神経外科)を受診し、CTやMRIなどの検査を受けるようにします。
現場では、安全な場所で横にさせ(安静)、頭部や頸部を冷やします。競技への復帰は、重傷度や受傷回数を考慮して慎重に行うようにします。(表①)
脳しんとうを起こすような衝撃は、すべてが予防可能なものとは限りません。ただ予防の例としては、頸部の筋力を強化しておくことで、衝撃が加わった時の頭の揺れを小さくするのに役立つ可能性があります。(表②)