妊娠後骨粗鬆症とは?
過去に骨粗鬆症に関するコラム(2023/4/18)がありますので、今回は若年女性でも起こる妊娠後骨粗鬆症についてのお話をさせて頂こうと思います。
※2023/4/18のコラム:https://hmh.or.jp/seikei/column/健康に長生きするために ~骨粗鬆症と予防~/
妊娠後骨粗鬆症とは?
一般的に骨粗鬆症と聞くと、高齢者に多い病気というイメージがありますが、高齢者だけではなく、近年では「妊娠後骨粗鬆症」と言われる妊娠や授乳に伴う一時的な骨粗鬆症が報告されています。典型的な症状として、妊娠後期から産後6か月程の期間に腰や背中の痛みを主訴として発症し、主に椎体の脆弱性骨折を伴います。
なぜ妊娠や授乳によって起こるの?
妊娠期から授乳期にかけて、胎児の骨形成のために母体からカルシウムが移行します。その中でも妊娠後期から授乳期にかけて特にカルシウム供給が必要になります。また、授乳期ではホルモンの影響により古い骨を破壊する機能が活性化することで、新しい骨を作るサイクルが追い付かなくなり、骨密度を低下させる原因となります。
通常では、授乳が終了して生理が再開すると母体の骨量も次第に回復していきます。しかし、低栄養や運動不足などで妊娠前に十分な最大骨密度を獲得できなかった場合に、脆弱性骨折をきたしやすくなる可能性があると考えられています。また、妊娠後骨粗鬆症は一時的に起こる状態ですが、それにより脆弱性骨折をきたした場合、背骨の変形などの後遺症を起こしてしまうため、妊娠後に腰背部痛が増強した場合には早期に検査することをお勧めします。
【若年女性の骨密度が低い原因】
〇低栄養
〇成長期における過度なダイエット
〇運動不足
〇遺伝
〇骨代謝疾患 など
治療法について
妊娠後骨粗鬆症の治療のガイドラインは存在しませんが、一般的な骨粗鬆症治療と同様に栄養や運動、日光浴を行うなど、日常生活に気を付けることが重要になってきます。骨密度の低下が高度な例や骨折が起きてしまった場合は、投薬による治療も考えます。また、断乳を行うことで授乳によるカルシウム漏出を防ぎ、ホルモン環境の変化を妊娠前の状態に戻すことで骨代謝を改善させることも必要になります。
※気になる症状がある方は、当院にお気軽にご相談ください!
〇参考文献
妊娠後骨粗鬆症 寺内公一;The Journal of Japan Osteoporosis Society Vol.7 (3),427-429,2021