リウマチ膠原病の現状

関節リウマチを治すことを目標に治療する時代

21世紀に入りリウマチ治療は革命的ともいえる進歩をとげました。古典的抗リウマチ薬が隅に追いやられ、メトトレキサート、生物学的製剤、さらにはJAK阻害薬が中心に躍り出てきました。しかし、関節リウマチではすべての患者が高価な新薬を使う必要はありません。 大部分の人はメトトレキサートを含む従前の治療で大きな効果が得られます。生物学的製剤を使う人はリウマチ患者全体の約3割と想定しています。

21世紀の薬物療法の主役
(生物学的製剤とJAK阻害薬)

生物学的製剤

作用機序一般名商品名
TNF阻害薬インフリキシマブ
エタネルセプト
アダリムマブ
ゴリムマブ
セルトリズマブペゴル
レミケード
エンブレル
ヒュミラ
シンポニー
シムジア
IL-6受容体抗体トシリズマブ
サリルマブ
アクテムラ
ケブザラ
T細胞選択的共刺激調節剤アバタセプトオレンシア
RANKL抗体デノスマブプラリア

低分子標的薬

作用機序一般名商品名
JAK阻害薬トファシチニブ
バリシチニブ
ペフィシチニブ
ウパタシチニブ
フィルゴシチニブ
ゼルヤンツ
オルミエント
スマイラフ
リンヴォック
ジセレカ

現在の関節リウマチの治療の動向・・・。関節リウマチは治るか?

1970年代から1980年代にかけて行われてきた治療は、痛み、腫れのコントロールに終始し、 結果的には骨の破壊、関節の機能障害、変形へと進んでいきました。1990年代メトトレキサートが 治療の中心となり、治療成績は従前の金塩、ブシラミン、サラゾピリン時代より格段に改善しました。 しかし、3年過ぎれば骨破壊、5年過ぎれば機能障害を避けては通れませんでした。 これらを根底から変えた薬剤が生物学的製剤と言われるものです。これらの特徴は骨、軟骨の破壊を防止し、 時には再生を促し、その結果、機能障害に陥ることを防止することも可能になりました。 すなわちリウマチは治る病気になったといっても良いでしょう。

ただし、それにはいくつかの条件があります。 それは、骨破壊を未然に防止するためには破壊に至る前、即ち発症早期(通常3-6ヶ月以内)に治療にかかる必要があります。 また、リハビリに対する正しい認識が必要です。リウマチのリハビリの基本はリハビリを積極的にやらないことです。即ち関節を安静に保つことが大切です。 しかし、それでは関節が固まりますので、関節を固めないための関節体操を行わなければなりません。 今日も関節がしっかり曲がった、きちんと伸びたことを確認することで十分です。また関節局所を暖め過ぎではいけません。 衣類による保温程度がいいでしょう。腫れて熱があれば氷で冷やしてください。以上に配慮し、生物学的製剤を使用すれば通常の人と変わらない生活が多くの患者さんで可能になります。

生物学的製剤にはいくつかの問題点があります。そのひとつは副作用です。 いいお薬は両刃の剣で、効果が優れている反面副作用も重篤なものもあります。生物学的製剤は強力な免疫抑制作用を持つため強力な治療効果がある一方、同時に感染症などに対しても抵抗力が弱くなります。通常は病原性を持たない細菌、カビなどによる日和見感染も起こります。結核の再発、発症も問題となります。 これらに対しては、万一のことを考え予防投薬で発症を抑えることも可能です。 肺に感染を起こしたときは、速やかに連絡をしていただいて適切な治療をすればそのほとんどは問題ありません。発症しても風邪だろうという軽い考えで放置しておくことは危険です。 おかしいと思えば必ず近医で胸のレントゲンを撮るか、主治医に連絡してください。

もうひとつの弱点は高価なことです。 生物学的製剤承認直後は自己負担が4-5万/月と非常に高額でしたが、現在は徐々に薬価が下がっています。一部の薬剤ではバイオシミラー(バイオ医薬品の後発品)が発売され、2万/月前後で使用できる薬剤もあります。またリウマチの病勢が落ち着けば減薬、中止できる可能性もありますので主治医にご相談ください。JAK阻害薬も含めまだまだ薬剤費は高いですが、元気で健康な人と同じように働くことで、3~4万/月の医療コストは捻出できるという考え方もあります。

JAK阻害薬についても説明しておきましょう。生物学的製剤は細胞の外で炎症を起こす物質(サイトカイン)の働きをブロックします。JAK阻害薬は低分子であるため細胞の中に入ることができ、サイトカインが働くときに必要なシグナル伝達を阻害することにより有効性を発揮します。内服薬でありながら生物学的製剤に勝るとも劣らない治療効果があります。しかし薬剤費が高額であることと長期的な安全性 (帯状疱疹を含めた感染症、血栓症、悪性腫瘍) に懸念があり、当院では生物製剤でもコントロールできない症例を中心に投与しています。

関節リウマチには夢のような新薬が出てきました。次も控えています。これらをうまく使うためには、専門医の下でリウマチを早く、正しく診断して、早く治療に入る。副作用のことをよく知り迅速に対応することが大切です。 それでは生物学的製剤やJAK阻害薬はリウマチ患者さん全員が対象となるかといえば答えはノーです。早期発見、早期治療で安価なメトトレキサートを含む従来薬でも十分コントロール可能な患者さんはたくさんおられます。また2000年以降に承認された抗リウマチ薬にもすばらしいものがあります。移植に使われているタクロリムスは副作用も少なく優れた効果を発揮しています。 一頃問題になったレフルノミドも肝障害、肺障害などに注意すれば、安定した効果が期待できます。MTXを含めた抗リウマチ薬、生物学的製剤、JAK阻害薬それぞれの問題点を熟知した経験のある施設での使用であれば、有効な治療薬であることは疑いありません。リウマチ患者さんの将来は大変に明るいものとなっています。

今後問題となるいくつかの点を挙げておきます。

これらにどう対応するかが大きな問題となってくるでしょう。治療のゴールを骨破壊完全防止に置くのは理想ですが、現実の医療は臨床的寛解、即ちより高いQOLを求めることで診療に幅もでき、患者さんの満足度も高まると考え、当院は日常診療を行っています。


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