リウマチ

関節リウマチとストレス

難病で大変な病気であるとのイメージが付きまとう関節リウマチ。たしかにほとんどの患者さんで生涯にわたる薬物療法を受けなければいけないという点では大変な病気である事は事実です。しかし、病気の病態についての理解は大きく進んでおり、その現象を的確にコントロールする薬剤も開発され、10数年前と比較しても、その病気の様相は大きく変化しています。

関節リウマチが難病であるとの認識のもととなるところはその苦痛の大きさもさることながら、その病気が原因不明とされている事にあると思います。この認識は間違ってはいないのですが正確ではなく、体の中で起きている現象はかなりのところまで解明されています。その成果が、ある特定の生理活性物質をピンポイントで狙って抑え込むことで病気の状態が大きく改善するという生物学的製剤によるリウマチ治療に結びついています。

関節リウマチは、ある特定の体質(炎症を起こしやすい、炎症を制御しにくい、免疫システムが自分の一部を敵と間違って認識してしまう自己免疫現象を起こしやすい、など)に、後天的な要素(歯周病、喫煙、各種ストレス、など)が加わって起きてくるとされています。

ただ、一人一人の患者さんで、体質についても微妙に異なり、後天的な要素も、ある人は喫煙、ある人は感染症、ある人は妊娠出産、ある人は過労、ある人は子供さんの病気などからくる心労、手術侵襲、etc、etc、と十人十色です。また、単一の事でなくいくつかの組み合わせで起きるのでしょうから、それらを特定することは困難です。これらの事から、リウマチの原因は不明とされてしまうのでしょう。漠然と、「ある特定の体質に後天的要素がかかった時に発症する。」という表現でしか説明ができないのです。

その中で、喫煙に関しては明らかに関節リウマチの原因、悪化因子となる事が判明しています。喫煙者で関節リウマチを心配するなら禁煙する必要があり、また、する意味があります。
ストレスというと漠然としていますが、関節リウマチを考えるうえで非常に重要な要素です。戦中の命を奪われる危険性からくるストレス、戦後のように食べるものを得て、生き抜くこと自体が困難な時代にかかっていたストレスとは異なり、生きる事、食べる事自体はそれほど困難でない時代においてのストレスは精神的な要素が多くなっています。

関節リウマチ患者さんを診療していて感じることとして、少なからぬ方々が、子供の病気など、自分ではどうしようもない、しかし、自分に全ての責任がかかってくる事態に悩まされているという事です。先天的疾患、自閉症、発達障害、不登校、などなど、聞いていて「それはそれはストレスがかかりますね。」という話を少なからぬ頻度で聞きます。

その上に関節リウマチのような病気になってしまい、一体どうすればいいのか、と考えて苦痛をさらに感じる状態となって、悪循環に陥ってしまっている方がおられます。また、そのように自分で抱え込んでしまう責任感の強い方が関節リウマチになりやすいのかもしれません。
先に述べたような子供の事でのストレスなどは、避けようがありません。

一方で、病気になった事実そのものは避けようがありませんが、問題となる合併症がなければ、関節リウマチはコントロールできる時代になっています。様々な生活でのストレスを処理するには、まず、自分がある程度しっかりと動けないといけません。そして、それは十分に可能な時代となっています。きちんとした専門的医療を受けて自分の苦痛をまず減らす、そうすれば少しは余裕が生まれるでしょう。

そして、自分にかかっているストレスをもう一度見つめなおす。それをストレスと感じなくなるようになれるなら一番ですが、そうでなくても、病院に来た時などにそれを少し吐露する。代わってあげる事もできませんし、長く聞いて差し上げる事も困難かもしれませんが、ちょっとは心が軽くなるかもしれません。

「己を知り、敵を知れば百戦危うからず。」です。病院にかかった日ぐらいはちょっとおいしいものでも買って帰って、頑張っている自分の身体、心にご褒美をあげてください。そうしているとこれまで悩まされていた苦痛を感じにくくなっている自分に気づくかもしれません。


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