SLEは血管に炎症をおこした結果、皮膚、腎、心、神経など多臓器に病変をおこす自己免疫病の代表です。
急性期(活動期)は共通の症状で述べたような全身症状を示します。皮膚には両頬に蝶形紅斑、日光にあたると皮膚の細胞が壊されて日光過敏症といわれる変化を来します。また、しもやけになりやす<、秋冬には指先の紫紅斑、レーノー現象も起こします。脱毛もみられます。
腎症(ループス腎炎)が最も重要な合併症です。蛋白尿、尿円柱から大量の蛋白尿を来すネフローゼ症候群となることもしばしばです。治療の進歩で少なくはなりましたが、腎不全、血液透析へと進んでいくケースもあります。肺は胸水を伴う胸膜炎、間質性肺炎、心臓は心嚢水貯留、心膜炎、心筋炎がみられることかあります。移動性で変形を伴わない関節痛もたびたび訴えます。筋痛、筋脱力もおこります。末梢血では白血球の減少(リンパ球減少)、血小板減少、溶血性貧血もおこります。神経では中枢神経ループスと呼ばれる頭痛、意識障害、神経障害、髄膜炎などを伴うことがあります。他にも膀胱に炎症が起きるループス膀胱炎、腸に炎症が起きるループス腸炎などもあり、全身性に多彩な症状を引き起こす可能性のある病気です。
治療はステロイドが基本ですが、病態に応じて投与量の調節が必要です。最近は、様々な治療薬が開発され、早期からの併用により速やかな減量が可能となっており、ステロイドの必要量が大幅に減っています。世界では以前から使用されていた抗マラリア薬のヒドロキシクロロキンが日本でも使用できるようになりました。網膜症の早期発見のために定期的眼科受診が必要ですが、関節炎や皮膚病変での有効性が高く、生活習慣病予防効果、感染症予防効果なども示唆されており、ステロイドの減量を行う上で重要な薬剤となっています。
腎病変、中枢神経病変、関節炎などの症状に応じてセルセプト(ミコフェノレートモフェチル)、エンドキサン、プログラフ(タクロリムス)、アザチオプリン、メトトレキサート、ブレディニン(ミゾリビン)などの免疫抑制剤を使い分けます。また、SLEで特に多い印象があるのですが、ステロイドを大量投与した場合問題となる副作用が骨壊死です。当院では抗血小板剤を十分に投与することによる骨壊死の予防、MRI検査による発病の早期発見に努めています。
承認当時は実に50年ぶりに米国で新規の薬剤がSLEで承認されたと話題になったのが、抗BAFF抗体のベンリスタ(ベリムマブ)です。現在は、抗Ⅰ型インターフェロン受容体抗体であるサフネロー(アニフロルマブ)も保険適応となり、治療の選択肢が増えてきております。
1986年ヒューズという人が抗リン脂質抗体(抗カルジオリピン抗体、ループス抗凝固因子、抗CLβ2GPⅠ抗体、抗プロトロンビン抗体)を持つ患者は血栓症を起こしやすく、妊娠すると流産を繰り返すと報告しました。昔からSLEでワッセルマン反応(梅毒の検査)が偽陽性になったり、APTTという検査が異常を示す人は流産しやすいことは経験的に知られていましたが、それが抗リン脂質抗体症候群です。抗凝固剤、抗血小板剤などで治療します。
新しい分類基準は、より早期に分類できるように設計されています。結果、診断しすぎにつながる恐れがあります。経験ある専門医の下での確認が必要です。