関節の疼痛と腫脹があるが、リウマチ因子や抗CCP抗体が陰性。背椎、仙腸関節、末梢関節、腱や靭帯の骨への付着部の炎症を主徴とし、しばしば眼、皮膚、消化器、泌尿、生殖器、心などの関節外症状を伴う疾患。家族内集積がありHLA-B27遺伝子との関連性が高い。このような症状を表す疾患として、強直性脊椎炎、乾癬性関節炎、反応性関節炎、炎症性腸疾患に伴う関節炎がある。またHLA-B27との関連のないものもあり、代表的疾患として掌蹠膿疱症性関節炎などがある。
以上12 項目の合計点が6 以上であればSNSA と診断してよい
* 仙腸関節X 線像変化
0 :正常,1 度:疑い,2 度:軽度(小さな限局性の侵食像や硬化像),3 度:中等度(侵食像や硬化像の拡大,関節裂隙狭小),4 度:強直[出典]日本リウマチ財団教育研修委員会: リウマチ基本テキスト第2 版,p646,2005
主に脊椎、仙腸関節が障害される疾患。軟骨下の炎症性肉芽組織が線維軟骨に置換され骨化に至る。症状的には腰痛、仙腸関節痛、まれに手足の関節痛を合併することもある。長期罹患により脊椎の可動域制限を来たす。骨関節外症状として、急性前部ぶどう膜炎が25~30%に起こりうる。またまれであるが、大動脈弁閉鎖不全、伝導障害、肺尖部に間質性肺炎を来たすことがある。
HLA-B27陽性率は90%であり診断に有用。MRIにて椎体内浮腫、椎体のびらんが認められ、早期診断の一助となる。 治療については関節リウマチに準ずる。NSAID、短期的少量のプレドニゾロン、サラゾスルファピリジン、メトトレキサート、またTNF阻害薬であるインフリキシマブ、アダリムマブは保険適応。エタネルセプトは海外で適応となっている。
乾癬患者の7%に関節炎が合併する。関節炎は単関節で発症するものが2/3を占め、うち半数は多発性関節炎へ移行する。また付着部炎、脊椎炎・仙腸関節炎も合併する。爪病変、DIP関節病変や破壊性関節炎は特徴的で、関節リウマチとの鑑別に役立つ。関節外症状は結膜炎が1/3に見られる。70%は皮膚病変が関節炎に先行するが、15%では同時に発症、のこり15%は関節炎が先行する。HLA-B27の陽性率は、脊椎炎では60%と高いが、末梢関節炎では25%と低い。 治療は強直性脊椎炎と同様である。またシクロスポリンも有効である。
泌尿・生殖器または消化管の感染症後、2~4週のちに急激に発症する。少関節性で下肢の関節炎が多く、アキレス腱や足底腱膜の付着部炎を伴う。 泌尿・生殖器ではChlamydia trachomatis/pneumonia、消化管ではShigella flexneri, Salmonella typhimurium/enteriditis, Yersinea enterocolitica, Campylobacter jejuni/fetusなどの病原体が関連する。
HLA-B27の陽性率は70%。関節滑膜組織からChlamydia trachomatisが検出されたという報告があり、HLA-B27はこれらの原因菌に対する免疫応答に変調を起こして、発症機序に関与していると考えられている。 治療はNSAID、サラゾスルファピリジン。効果不良の場合メトトレキセートを用いる。また原因菌としてChlamydiaが想定される場合、抗クラミジア薬の投与を行う。
潰瘍性大腸炎の10~20%、クローン病の10%に合併する関節炎。移動性に少関節に発症し、大部分は下肢の関節である。末梢関節炎は腸疾患の活動性を反映するが、脊椎炎/仙腸関節炎は反映しない。HLA-B27は脊椎炎/仙腸関節炎の70%に認められる。関節外症状は、クローン病で認められる結節性紅斑、潰瘍性大腸炎では壊疽性膿皮症を認める。両疾患とも有痛性口腔内潰瘍を発症し、急性前部ぶどう膜炎も認める。これらは腸疾患の活動性を反映し、末梢関節炎と同時に発症する傾向がある。 治療は強直性脊椎炎と同様であるが、エタネルセプトだけは腸炎に対しては無効とされ、その作用機序の違いが理由と想定されている。
手掌、足底ににきびが発症する掌蹠膿疱症の10%に発症する関節炎で、主に胸鎖関節に出現する。胸鎖関節や胸肋関節の疼痛、肥大、隆起、一過性の末梢関節炎や付着部炎がみられることもある。日本に多い疾患でもある。HLA-B27との関連は示唆されていない。反応性関節炎様ではあるが、抗菌薬の有効性は証明されていない。 治療はNSAIDが中心。通常は予後も良く、関節部の隆起のみで疼痛も消失する。稀に炎症が上胸部の血管まで及んで血栓を形成することもある。