骨粗鬆症と転倒予防について
骨粗鬆症と転倒予防について
①骨粗鬆症とは… 「骨強度の低下を特徴とし、骨折のリスクが増大しやすくなる骨格疾患」と定義されています。わが国では現在、約1,280万人が骨粗鬆症に罹患していると推定されています。 骨粗鬆症により骨の脆弱化が起こり、わずかな外力でも骨折しやすくなることで高齢者では変形や寝たきりの大きな原因となります。
②骨粗鬆症の予防と治療 ○骨粗鬆症は自覚症状の表れにくい病気です。痛みを感じた時にはすでに骨折していたり、進行していることが多いのが恐ろしいところです。早くから検診や病院での骨量検査を行うことで予防をしていくことが重要になってきます。
《治療》
・薬物療法:ホルモン剤、活性ビタミンD製剤、カルシウム剤などが投与されます。
・運動療法:骨粗鬆症で骨強度が低下することで最も恐ろしいのが転倒です。今回は転倒予
防に対する運動を紹介したいと思います。
まず転倒しやすい状態とは…
①背中が丸まっている(目線が下)
②とっさに脚が出ないまたは手が出ない(支えを掴むなど)
③つま先(脚)が上がっていない
あとは精神的な面や、視力などの影響もあります。
これらの状態を予防または改善していくために体幹や下半身のトレーニングを紹介して
いきます。
【注意事項】
・全ての運動において呼吸は止めないようにし、運動の最中に身体に痛みが生じる場合は
運動を控えましょう。
・周りの環境に注意して運動中の転倒に気を付けましょう。
・体調が優れないときは無理に行わないようにしましょう。
まずは①背中が丸まっている(目線が下)に対して3つの運動を紹介します。
・腹式呼吸(ドローイン)
仰向けで寝て膝を曲げ、呼吸を行います。吸うときは鼻から吸い、お腹を膨らませます。
吐き出す時には口をすぼめてゆっくりとお腹から絞り出します。
体幹を安定させるために必要なお腹の筋肉の働きを促すことが出来ます。
・ブリッジ(お尻上げ)
先ほどの腹式呼吸(ドローイン)の息を吐き出したときの状態で膝から肩までが一直線に
なるようにお尻を上げます。上げる前にお尻を締めるように意識すると上手く行いやす
いです。太もも裏に効いてくる方は膝の曲げる角度を強くすることで改善されやすいで
す。お尻の筋肉の収縮を促すことが出来ます。
・フロントブリッジ
うつ伏せから肘を立てて体を地面から浮かせます。お腹が下がって腰が反らないように
注意しましょう。腹筋と背筋の同時収縮を促し体幹の安定性を向上させます。
次に②とっさに脚が出ない、手が出ない(支えを掴むなど)に対して2つの運動を紹介し
ます。
・股関節外転運動
横向きになり上側の脚を上げます。このとき真上ではなくやや後方に上げることで効果
的に運動が出来ます。また、つま先は下に向けるようにしましょう。片脚になった時の骨
盤の安定性に関与する中殿筋の運動になります。
・リーチ動作
座った状態で地面から足を浮かせ、腕を横に伸ばします。できるだけ遠くに伸ばしてそこ
から最初の位置まで戻るようにしましょう。重心の移動やバランスが崩れそうになった
際の修正能力を養います。
最後に③つま先が上がっていない状態に対しての運動を紹介します。
・片脚立ち保持
検査としても行うことがありますが一般に高齢者では5秒を安定して行えるかどうかが
重要と言われています。実際に行う際には周りに机や手すりなど安定した支えがある場
所で転倒に注意して行いましょう。
以上の運動はあくまでバランスや転倒予防に関与する運動の一部です。人によって適切、
不適切な運動があるため各々にあった運動を行うことが大切です。
今回紹介させていただいた運動以外にも効果的な運動はたくさんありますので今後機会
があれば紹介させていただきたいと思いますし、当クリニックをご利用していただいた
際には一人一人の状態に合わせた運動も提案させていただいております。
参考文献
1)落合慈之ほか:整形外科疾患ビジュアルブック,173-176,株式会社学研メディカル
秀潤社,2012
2)山嵜勉ほか:整形外科理学療法の理論と技術,株式会社メジカルビュー社,2011
3)骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン作成委員会編:骨粗鬆症の予防と治療ガイドライ
ン2011,ライフサイエンス出版,2011