慢性疼痛に対する運動の重要性
〇慢性疼痛に対する運動の重要性
『腰や首の痛みがなかなか治らない』『安静にしているのに痛みが強くなってきた』といった症状でお困りではありませんか?このような長期間持続する痛みは慢性痛だからかもしれません。このコラムでは長期間持続する痛みでお困りの方に向けて、慢性痛とは何か、慢性痛患者における運動の重要性について解説していきます。
- 疼痛の種類(急性痛と慢性痛)
➤痛みには様々な分類方法があり、その中でも今回は痛みの持続時間で分けたものを紹介します。以下の表は国際疼痛学会が定めた急性痛と慢性痛のそれぞれの特徴です。
- 運動不足と痛みの関係性
➤慢性痛の原因となる中枢神経系の変化や疼痛抑制機構の機能低下は痛みによる運動回避によって引き起こされると考えられています。痛みが出る事を嫌がって動かないように庇う運動回避は「破局的思考」から生じており(図1)痛みに対してネガティブな感情が原因と考えられます。このネガティブな思考は恐怖心不安感であり、これらの増減が痛みの増減に関わると考えられています。その結果として運動回避に陥ると痛みが増強し、痛みが増強した結果として破局的思考が更に強くなるといった、悪循環が生まれ痛みが長期化します。そのため慢性痛の治療では破局的思考に対する認知行動療法といったアプローチも必要です。痛みに対するネガティブな思考を修正し、運動回避を回避するために積極的な運動を行う事が慢性痛治療において重要となります。
3.慢性痛に対する運動の効果
➤これまで慢性痛を生じる原因とメカニズムについて説明してきましたが、この章では運動がなぜ慢性痛に効果的なのかを説明します。慢性痛の原因をまとめると①中枢神経系の機能変化②疼痛抑制機構の機能低下③心理的な要因(破局的思考)の3つです。これらに対して運動は効果的なのです。
具体的には…
4.慢性痛に対する運動の有用性
➤慢性痛に対して有効で根拠の高い治療法をまとめた慢性疼痛ガイドラインには、有酸素運動や筋力トレーニングといった一般的な運動療法、体幹トレーニング、ヨガ・ピラティス・太極拳などの実施が強く推奨されています。
具体的な運動の方法については過去のコラムをご参照ください!
当院では一人一人に併せた運動プログラムの作成・指導も行っています。
長期間なかなか治らない痛みでお困りの方はお気軽にご相談ください!
参考文献
1)松原貴子 他:ペインリハビリテーション,P8-10. 135-156
2)厚生労働省:慢性疼痛ガイドライン,19.40-46