医療法人社団ヤマナ会 東広島整形外科クリニック

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座位における不良姿勢

座位姿勢による腰へのストレス
 まず、人類が直立位で二足歩行を行うようになったときから、重力に抗する努力が必要になりました。そして、その重力は垂直方向に背骨にかかってきます。
 では、実際の日常生活において腰にどれだけの負担がかかっているのでしょう。椎間板といわれる、背骨と背骨の間にあるクッションのような組織にかかる圧力を測ると、直立位での圧力100に対して、仰向けで寝たときは25、横向きでは75になります。
また、上体を軽く前傾した姿勢では150、椅子に腰かけると140、椅子に腰かけて上体を前傾すると186の圧力がかかります。このように、立っている姿勢よりも座っている姿勢のほうが、椎間板への圧縮ストレスがより多くなっていることがわかります。
 当院でも、腰痛を訴えて来院される患者様の中には「座っているほうがしんどい」とおっしゃる方が多くみられます。

良い座位姿勢とは
 では、良い姿勢とはどのような姿勢なのかを考えていきましょう。そのためにはまず、骨格などの仕組みを知る必要があります。
・背骨の構造

 

 背骨は脊柱といい、上から頚椎、胸椎、腰椎、仙椎、尾椎に分けられます。
 頚椎は7個、胸椎は12個、腰椎は5個、仙椎は成人では5個でくっついて仙骨になり、3~6個の尾椎がくっついて尾骨を構成します。また、仙骨の両側には耳のような形の寛骨がついて骨盤を形成しています。
 脊柱は後ろから見ると、縦に真っ直ぐになっていますが、横から見ると、頚椎と腰椎では前方に凸(前弯)の、胸椎と仙骨・尾骨では後方に凸(後弯)のカーブを描いています。これを生理的弯曲といいます。人はこの生理的弯曲によって身体のバランスをとり、日常生活に適した姿勢を保っています。

・椎間板の役目

 椎間板は、背骨にかかる衝撃を吸収して、和らげるクッションの働きをしています。椎間板は中央部の髄核と、それを取り囲む輪状の線維輪でできています。正常な髄核は、水分が非常に豊富な組織です。
 また、上下の椎体は複雑に走行する線維群によって連結されています。さらにその外側を強力な靭帯で補強されていますが、後方は前方ほど強くなく、後方部分は椎間板の弱点といえます。


・筋肉の役目

 

 背骨を安定させるためには、腹筋と背筋のバランスが重要です。とくに腹筋群は、横隔膜とともに腹圧を確保して、背骨を支える役目をしています。
 また、仙骨が骨盤の一部をなしているので、骨盤の筋肉も姿勢を調整するのに大きく関与しています。

 


・不良姿勢とは
 座っていると腰が痛くなるのは、腰部の筋の疲労が一つ考えられます。腰部の筋が長時間緊張し続け、筋が疲労して筋内の血行が悪くなるために起こります。
 では、椅子に座っている姿勢を例に良い姿勢と悪い姿勢について考えてみましょう。

①は胸を十分に張り、一見良い姿勢に見えますが、骨盤が前に傾斜して反り腰(腰椎前弯)が強くなっています。


②は反対に骨盤が後ろに傾斜し、腰が丸くなっていて腰部の筋や腰椎の後方の靭帯などが引き伸ばされた状態です。
①、②ともその姿勢を長く続けていると、腰部の筋が疲労しやすい状態といえます。


一方、後ろから見ると骨盤の中央に背骨がまっすぐ立っている状態が正常です。しかし、誰にでも利き手、利き足があるように、腰部も体重をかけやすい側とそうでない側があります。

③のように腰から上の体重を骨盤上に乗せるにしても、左右のいずれかに偏っている場合が多いです。


左右に偏る影響は、左右の足の組み方にクセとして現れます。通常、右に体重が乗りやすい人、あるいは背骨が骨盤に対して右に寄っている状態の人は、左足を上に組みやすいのが普通です。
このような習慣が、徐々に腰部の筋に慢性的な緊張を与え、さらには腰椎の変形に進行していく場合もあります。

 

・座位姿勢不良による腰痛対策
 〇環境面:①作業台の高さはみぞおち付近になるように設定する。
     ②脚はできるだけ組まないようにする。
     ③床に足の裏全体が接触するようにする。
     ④時々、立ち上がったり姿勢を変える。

 〇ストレッチ
  座位を長く続けることにより、凝り固まってしまった筋肉を持続的に伸ばすことで、血流の改善や疼痛の緩和が期待できます。ここでは殿部に着目してストレッチを紹介します。
  
・体幹の回旋

図のように仰向けの姿勢から片方の脚を対側に向かって回旋します。
このときは全身リラックスした状態で肩が床から浮かないようにしましょう。
左右とも1回につき20秒を目安として3回程度ください。


・股関節屈曲

図のように仰向けの姿勢から片方の脚をまっすぐ胸に引き寄せます。
このときも両肩に力が入らないように楽に行いましょう。
これも左右とも1回につき20秒を3回程度行いましょう。

 

 

参考文献
三木英之,蒲田和芳.(2000).専門医が治す!腰痛:高橋書店.