骨粗しょう症の治療
骨粗しょう症
骨粗鬆症とは、骨の量が減って骨が脆くなり、骨折しやすくなる病気です。特に閉経後の女性に好発し、高齢化が進む日本において特に問題になっています。
骨の中の支え(骨梁)が次第に細くなり、加重や負荷に対して弱くなります。骨が弱くなると、ちょっとしたことで骨折しやすくなります。
閉経後の女性の方は特に、定期的に骨量のチェックをされることをおすすめします。そこで重要なのは、同世代との比較ではなく、20歳の標準骨塩量と比較する事です。日本人女性で60歳で人並みであればもう骨粗鬆症となってきている状態ですので積極的予防、さらには治療が必要です。
高齢者の寝たきりの原因のうち約20%が「骨折」といわれています。中でも股関節や太ももの骨の骨折が問題となります。高齢者では骨折の手術後の筋力の回復が悪く、骨折が治った後も自力で歩くことが困難になり、そのまま寝たきりとなってしまうのです。
また、背骨が上下につぶれてしまう圧迫骨折では、背中が丸くなり内臓が圧迫されるため消化不良や便秘になったり、呼吸が困難になり痰が出しにくくなり肺炎となったり、腰痛、神経痛、など苦痛の原因にもなり日常生活に深刻な悪影響をもたらします。
近年、骨粗鬆症治療薬の進歩はめざましく十分な骨量の維持、骨折の予防も可能となってきました。リウマチ性疾患では、疾患そのものと、薬剤(ステロイド、メトトレキサート、制酸剤、ワーファリン)による骨粗鬆症の増強が認められ、かつ、高めの骨密度でも骨折する事が示されており、より厳重に管理し、適切な予防を行う必要があります。
当院では、薬剤性骨粗鬆症の予防、骨粗鬆症の早期発見、早期治療による骨折の予防、日常生活の質の維持を目標とし積極的に診療に当たっております。
治療
治療は食事療法を基本として薬物療法を行います。食事では、ビタミンD、カルシウム、ビタミンK(ワーファリン使用中の人は禁止)の摂取を心がけてください。日光浴が重要ですが、日光に当たれない疾患をお持ちの場合は天日干ししたシイタケなどが良いようです。
ビスホスホネート
骨吸収抑制剤で、破骨細胞という骨を溶かす細胞の働きを弱めます。ステロイド性骨粗鬆症では第一選択薬です。空腹時でないと吸収効率が非常に悪いため、早朝起床後に内服、食道の粘膜障害を予防するため多めの水で内服する事が必要です。最近は点滴、皮下注射製剤が発売されており、月に1回の投与で確実な投与が可能となっています。
抗RANKL抗体
骨吸収抑制剤で、破骨細胞が成熟するときに必要なRANKLに対する生物学的製剤です。骨粗鬆症に対しては半年に1回の皮下注射で、関節リウマチの骨破壊への予防効果も投与回数を増やした形で治験がされている薬剤です。
*注意
骨吸収抑制剤では抜歯などの後に顎骨壊死という合併症が起きるとされています。しかし、この頻度は経口剤では非常に低く、薬剤の使用による骨折予防効果の高さを考えると、このために投薬を躊躇する理由にはなりません。また、最も大切なのは抜歯した時におきる感染をコントロールする事です。抜歯の前から十分に口腔内の清潔に注意してウガイなどを行い、予防的な抗生剤の使用も行うべきです。リウマチ性疾患で免疫抑制療法を行っている、コントロール不良の糖尿病がある場合などは特に注意が必要です。 抜歯の時にはきちんと主治医に相談してください。
PTH製剤
骨代謝に深くかかわっている副甲状腺ホルモンと同様の作用を示すタンパクを利用した骨形成促進剤です。生涯で投与できる期間が限られており毎日の皮下注射、週一回の皮下注射の2剤が使用されています。骨塩量のみならず、骨質も改善するとされており、脊椎圧迫骨折後の疼痛の改善効果も示されています。海外ではスポーツ選手の骨折治癒促進のために使用される事もあるようです。
選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM)
SERMは、エストロゲン受容体(ER)に結合し,エストロゲンと異なる構造であるため、組織選択的な作用を起こす薬剤です。その結果,乳房や子宮ではエストロゲン様作用を発現しないが,骨などに対してはエストロゲン様作用を発揮して乳がんや子宮がんのリスクを高めずに骨粗鬆症を改善させます。
活性型ビタミンD
カルシウムの吸収、排泄に関与するビタミンで、その活性化型を投薬します。最近、骨吸収も抑止する作用もあるとされている薬も開発され使用されています。骨吸収抑制剤との併用は有効と考えられています。
骨の状態をきちんとケアする事で、転倒骨折もへり、介護負担もへり、自分の足、腰で自立した生活をする事が出来ると思います。気になる方は速やかに受診して検査をうけていただければ幸いです。
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