各生物学的製剤の特徴

生物学的製剤のうち現在わが国で最も投与症例が多い薬剤はTNF阻害薬です。この薬剤は炎症の中心的役割をはたすサイトカインTNFの働きを中和することにより炎症を沈静化します。この薬剤は効果発現が早く著効例では数日で効果を実感することが出来ます。TNFを中和する薬剤はレミケード、エンブレル、ヒュミラ、シンポニー、シムジアの5種類がすでに承認されており、各薬剤の特徴を知る必要があります。

レミケード

レミケードを投与するにはメトトレキサート(MTX)の併用が必須であり、MTXを服用していない患者様はこの治療を受けることができません。投与方法は点滴で約2時間(慣れてきたら30分~1時間に短縮可能)、投与間隔は図の通りです。2003年の承認時には3mg/kg(体重50kgの患者様は150mg)と限定されていたため、効果不十分なケースが多い問題点がありましたが現在では10mg/kgまでの増量や投与間隔を4週間に短縮(6mg/kg以下の場合に限る)することも承認され有効性が高まることが期待されています。

エンブレル

エンブレルの一般的な投与方法は2回/週の皮下注射です。1回の注射で25mgの薬剤を投与するのですが2010年10月には50mgのシリンジも承認され1回/週の投与も可能となりました。頻繁に病院受診することわずらわしい場合には自己注射することも可能です。注射器は手指の変形を伴う患者様でも使用しやすいように工夫されているため、当院でエンブレル投与を受けている95%の患者様は自己注射をされています。「意外と簡単」というのが皆様からの声です。2回/週投与することは面倒ですが、もし副作用が出現した際には血中から消失するまでの時間が短いためTNF阻害薬3剤の中では安全性が最も高いと考えられています。

ヒュミラ

レミケードと作用機序は同じですが、2週間に1回の皮下注射と投与方法が簡便になっており、エンブレルと同様自己注射が可能です。MTXの併用は必須ではありませんが、MTXを投与していない患者様では効果減弱するケースが多く、当院ではMTXを服用できる場合のみ使用しています。

シンポニー

レミケードと作用機序は同じですが、4週間に1回の皮下注射と投与方法が簡便になっており、4週ごとの通院の度に投与します。他の皮下注製剤と異なり、自己注射の困難な患者様でも使用が可能です。MTXの併用は必須ではありませんが、MTXとの併用の方が効果が高いことが分かっています。

シムジア

これまでの抗体製剤と異なり、TNFと結合する部分だけを切り取って、そこにポリエチレングリコール(PEG)をくっつけることで体内での安定化を図った薬剤です。タンパクの合成方法が簡便であり製造コストが安いため価格が低くなることが期待されましたが、残念ながら他の薬剤と同等の価格となっています。抗体を免疫細胞が認識する部分と補体という細胞を壊す物質が結合する部分がないため、細胞障害作用が無いとされており、エンブレルと同じような働き方をしながらTNFαのみを阻害する薬剤です。投与方法は、2週間に1回の皮下注射です。MTXの併用は必須ではありませんが、やはりTNF阻害剤でありMTXとの併用の方が効果が高いです。

TNF阻害薬の使い分け

基本的には患者様の利便性を考え、皮下注射(自己注射)に抵抗がある場合は点滴を、2時間の点滴が面倒であれば皮下注射の薬剤を使用します。レミケード、ヒュミラ、シンポニーにはTNFを産生する細胞そのものを障害(細胞を壊す)する働きがあるため、生物学的製剤の投与を中止できる可能性があり、合併症のない患者様に適していえるといえます。一方エンブレルには細胞障害性がありませんが、その結果副作用はレミケード、ヒュミラ、シンポニーより低く、高齢者や合併症を有する患者様には適していると考えます。

TNF阻害薬の問題点

炎症性サイトカインであるTNFは関節リウマチの病態にとっては悪者です。しかし細菌・真菌などが侵入した際には感染防御に重要な役割をはたしています。TNF阻害薬を投与中に咳、発熱、息切れなどの症状があれば病院を受診し、X線検査をうける必要があります。

アクテムラ

アクテムラはIL-6という炎症性サイトカインの働きを中和する薬剤でTNF阻害薬と作用する部分が異なるため、TNF阻害薬が無効である患者様にも高い有効性が期待できます。投与方法は点滴で約1時間、投与間隔は4週間です。TNF阻害薬と比較し、効果を実感するには少し時間を要し1~3ヶ月かかります。しかしその効果は徐々に高くなり、ゆっくりですがしっかりと効く薬剤です。MTXの併用ができない場合でも有効率は高く、単剤ではもっとも有効率が高いといえます。最近、皮下注製剤が承認され、2週間に1回の皮下注射となっています。薬剤投与量が一定であるため体重が重い方での有効性が若干落ちますが、利便性の高い投与方法が出来るので患者様の負担軽減に期待されています。

アクテムラの問題点

TNF阻害薬と同様感染症のリスクが高くなります。さらにIL-6を阻害することにより肺炎など感染症を併発しても発熱がでない「マスキング」が問題となります。そのためアクテムラを投与中は発熱がなくても咳、痰、倦怠感など軽微な症状でも受診し、レントゲン検査を受けることが不可欠です。

オレンシア

オレンシアは、これまでの生物学的製剤とは全く異なる働き方で関節リウマチの治療を行います。これまでの生物学的製剤は、関節の炎症(腫れ・痛み)を起こしているサイトカインという物質に直接くっつくことによりその働きを抑え、痛み、腫れを抑えていこうというものでした。一方、オレンシアは、関節リウマチの炎症を起こしている免疫システムの司令官であるT細胞の働きを抑え、サイトカインの産生をおさえて関節リウマチを良くしようという薬です。

体重によって決められた用量を初めの4週間は2週間ごと、その後は4週間に1回点滴で投与します。他の点滴の薬に比べて点滴時間は30分と短く設定されており病院での滞在時間が短くてすみます。メトトレキサートの併用はしなくても良いのですが、これまでの治療成績はほとんど併用した場合のデータとおり、基本的には併用が望ましいです。最近、皮下注射製剤が承認されました。週に1回の皮下注射となっています。
効果に関してはTNF阻害剤に比較してゆっくり効く印象ですが、効果が出る確率、効果が持続する確率どれも非常に高いものとなっています。長く使えば使うほど効果が高まってきます。 これまでの生物学的製剤に比較して重篤な感染症の頻度が低く、安全性の高さが期待されます。

オレンシアの問題点

安全性が比較的高いとはいえ、免疫を抑える薬剤であることには変わりがありません。感染症への注意は必要であり、発熱、咳、痰などの症状があればレントゲン検査を受けるなどの対応が必要です。また、海外でも使用経験が他の製剤と比較すると短いです。長期的な安全性の評価を続けていくことが必要です。ワクチンの効果への影響がはっきりしており、ワクチンを接種する場合には投与後2~3週間後の投与が推奨されています。

まとめ

現在、生物学的製剤は3系統7種類となり、関節リウマチの治療選択肢は更に増え、合併症がなければ何らかの形で病気の勢いを抑えることが出来るようになってきています。しかし、免疫を抑える薬剤であることに変わりはありません。また、病気が良くなった後で中止できる治療法はまだ確立していません。より良い効果を得るためには、長期間、安全に効いている薬剤を使用していく必要があります。

そのときに重要となるのは、うがい、手洗い、歯周病の予防といった感染症対策であり、肺の状態を悪くしないための禁煙(喫煙は関節リウマチの発症、増悪因子とされています。)、体調を保つための睡眠、栄養の確保、手、手指への荷重を避けるための生活術(袋は肩にかけるなど)、足趾の変形予防策(靴の中敷)、住民検診などでがん検診を受ける、など生活の中での自分へのケアが大切です。

各生物学的製剤の投与方法

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