血清反応陰性関節炎

関節の疼痛と腫脹があるが、リウマチ因子や抗CCP抗体が陰性。背椎、仙腸関節、末梢関節、腱や靭帯の骨への付着部の炎症を主徴とし、しばしば眼、皮膚、消化器、泌尿、生殖器、心などの関節外症状を伴う疾患。家族内集積がありHLA-B27遺伝子との関連性が高い。このような症状を表す疾患として、強直性脊椎炎、乾癬性関節炎、反応性関節炎、炎症性腸疾患に伴う関節炎がある。またHLA-B27との関連のないものもあり、代表的疾患として掌蹠膿疱症性関節炎などがある。

分類基準(Amur、1990年)

  1. 腰部または背部の夜間痛あるいは同部位の朝のこわばり 1点
  2. 非対称性の少数関節炎(oligoarthritis) 2点
  3. 殿部痛/左右交互の殿部痛 1/2点
  4. ソーセージ様の趾または指 2点
  5. 踵部痛または他の明確な付着部炎 2点
  6. 虹彩炎 2点
  7. 非淋菌性尿道炎または子宮頸管炎(関節炎発症前1 ヵ月) 1点
  8. 急性下痢(関節炎発症前1 ヵ月) 1点
  9. 乾癬および/または亀頭炎および/または炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎またはクローン病) 2点
  10. 仙腸関節炎(X 線変化両側性grade ≧ 2,片側性grade ≧ 3)* 3点
  11. HLA-B27 陽性および/または強直性脊椎炎,ライター症候群,ブドウ膜炎,乾癬または炎症性腸疾患の家族歴  2点
  12. NSAID 投与後48 時間以内の明確な症状改善および/または中止後の疼痛の急速な再発  2点

以上12 項目の合計点が6 以上であればSNSA と診断してよい

* 仙腸関節X 線像変化

0 :正常,1 度:疑い,2 度:軽度(小さな限局性の侵食像や硬化像),3 度:中等度(侵食像や硬化像の拡大,関節裂隙狭小),4 度:強直[出典]日本リウマチ財団教育研修委員会: リウマチ基本テキスト第2 版,p646,2005


代表的疾患の特徴

強直性脊椎炎

主に脊椎、仙腸関節が障害される疾患。軟骨下の炎症性肉芽組織が線維軟骨に置換され骨化に至る。症状的には腰痛、仙腸関節痛、まれに手足の関節痛を合併することもある。長期罹患により脊椎の可動域制限を来たす。骨関節外症状として、急性前部ぶどう膜炎が25~30%に起こりうる。またまれであるが、大動脈弁閉鎖不全、伝導障害、肺尖部に間質性肺炎を来たすことがある。

HLA-B27陽性率は90%であり診断に有用。MRIにて椎体内浮腫、椎体のびらんが認められ、早期診断の一助となる。 治療については関節リウマチに準ずる。NSAID、短期的少量のプレドニゾロン、サラゾスルファピリジン、メトトレキサート、またTNF阻害薬であるインフリキシマブ、アダリムマブは保険適応。エタネルセプトは海外で適応となっている。

乾癬性関節炎

乾癬患者の7%に関節炎が合併する。関節炎は単関節で発症するものが2/3を占め、うち半数は多発性関節炎へ移行する。また付着部炎、脊椎炎・仙腸関節炎も合併する。爪病変、DIP関節病変や破壊性関節炎は特徴的で、関節リウマチとの鑑別に役立つ。関節外症状は結膜炎が1/3に見られる。70%は皮膚病変が関節炎に先行するが、15%では同時に発症、のこり15%は関節炎が先行する。HLA-B27の陽性率は、脊椎炎では60%と高いが、末梢関節炎では25%と低い。 治療は強直性脊椎炎と同様である。またシクロスポリンも有効である。

反応性関節炎

泌尿・生殖器または消化管の感染症後、2~4週のちに急激に発症する。少関節性で下肢の関節炎が多く、アキレス腱や足底腱膜の付着部炎を伴う。 泌尿・生殖器ではChlamydia trachomatis/pneumonia、消化管ではShigella flexneri, Salmonella typhimurium/enteriditis, Yersinea enterocolitica, Campylobacter jejuni/fetusなどの病原体が関連する。

HLA-B27の陽性率は70%。関節滑膜組織からChlamydia trachomatisが検出されたという報告があり、HLA-B27はこれらの原因菌に対する免疫応答に変調を起こして、発症機序に関与していると考えられている。 治療はNSAID、サラゾスルファピリジン。効果不良の場合メトトレキセートを用いる。また原因菌としてChlamydiaが想定される場合、抗クラミジア薬の投与を行う。

炎症性腸疾患に伴う関節炎

潰瘍性大腸炎の10~20%、クローン病の10%に合併する関節炎。移動性に少関節に発症し、大部分は下肢の関節である。末梢関節炎は腸疾患の活動性を反映するが、脊椎炎/仙腸関節炎は反映しない。HLA-B27は脊椎炎/仙腸関節炎の70%に認められる。関節外症状は、クローン病で認められる結節性紅斑、潰瘍性大腸炎では壊疽性膿皮症を認める。両疾患とも有痛性口腔内潰瘍を発症し、急性前部ぶどう膜炎も認める。これらは腸疾患の活動性を反映し、末梢関節炎と同時に発症する傾向がある。 治療は強直性脊椎炎と同様であるが、エタネルセプトだけは腸炎に対しては無効とされ、その作用機序の違いが理由と想定されている。

掌蹠膿疱症性関節炎

手掌、足底ににきびが発症する掌蹠膿疱症の10%に発症する関節炎で、主に胸鎖関節に出現する。胸鎖関節や胸肋関節の疼痛、肥大、隆起、一過性の末梢関節炎や付着部炎がみられることもある。日本に多い疾患でもある。HLA-B27との関連は示唆されていない。反応性関節炎様ではあるが、抗菌薬の有効性は証明されていない。 治療はNSAIDが中心。通常は予後も良く、関節部の隆起のみで疼痛も消失する。稀に炎症が上胸部の血管まで及んで血栓を形成することもある。